−− 結 前 −− |
時が経ち、日差しも西に傾き始めた頃、極秘に終結している多数の人影があった。黒い野良着の即席戦闘服を着込んだ解放戦線の勇士と、支援指導する北の正規軍派兵の一群である。 各自の表情には心なしか緊張の色が滲み、手にした武器の確認に余念が無かった。そう、これから最終攻撃の一斉吶喊が待ち構えていたのである。敵の米帝に与する傀儡軍勢力の陣地へ切り込むのだ。 「総員、準備はいいか?」 隊長の緊張した声が響く。無言のままにうなずく同志。いま一度ゆっくりと一同を見回す。緊張に強張った顔が並ぶ。しかし、そこに恐怖は無かった。 「・・・・」 満足そうに隊長はうなづいた。準備完了だ。後は本部の合図を待つばかり。武者震いにも似た震えが襲う。怖くないといえばウソになる。しかし、それ以上に興奮しているのが本当だ。いま一度手にした銃の確認をする。何の問題もの無い。そこには頼りになる相棒が、鈍い光を放ってどっしりと構えていたのだった。 「頼んだぞ・・・・」 神など信じないが、今はまさに祈りたい気分だった。しかし、神などという得体の知れないものなど信じられない。唯一信じられるのは、手にしたコイツだけだとわかっていた。神というのなら、まさにコイツの事なのだろう。他のやつらは知らないが、そのときはそうだった・・・・ 今回は今までに無く激しい戦闘になる事も間違いなかった。どっちに転ぶかなど誰にもわからない。結果は、生き残った者のみが知るという事なのだろう。覚悟はしているが、できるなら死にたくは無い・・・・ そのとき、遠くから甲高い笛の音と共に声が聞こえた。酷くゆっくりとした、それでいて明瞭な声だった。 「攻撃開始!!」 言葉を認識すると同時に、身体は思いもしない瞬発力を持って駆け出していた。地響きのような唸り声と共に―― ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 「くたばれヤンキー!!」 怒涛の歓声と共に、敵の拠点<キャンプ・サボイ>に突撃を開始する同志たち。このときばかりが唯一の見せ場とばかり勢いに任せた攻撃です。少ない水でも出口が細けりゃレーザー光線――まさにそんな感じでした(笑)
なかば不意討ちという事もあってか、敵は有効な反撃もする事がかなわず、次々と撃ち倒されていったのです。中には果敢にも反撃をしてくる米帝の姿もありましたが、やはり結果は同じ事でした。
敵の守備隊など、雪崩をうったがごとき我らが突撃の前には何の意味まなく敵は全滅、瞬く間に敵キャンプ地は我らが手に落ちたのでありました。まぁ、主たる守備隊が南傀儡軍勢力だった事も大きく関係していたのでしょう。ヤツラは根性なしだから(笑) その後行われたのが、ここの守備隊長だという老将軍の捜索、および敗残兵の駆り出しです。累々と残骸の散乱する陣地内を隈なくあたります。
敗残兵はチラホラと見つかったものの、肝心の老将軍がなかなか見つかりません。 『もしかしたら、勢いあまってやっちゃったんじゃないだろうか・・・・』 そんな不安がよぎります。まぁ、だとしてもしょせんは敵の事なので、それはそれで問題ないことでしょうけどね。もっとも、お偉いさん(スッタフ)は大変かもしれませんが(笑)
と、そのときでした。 「見つけたぁ〜!!」 トーチカの影から声が上がります。見ると、迷彩服を着た年配の傀儡軍将校らしい者が引きずり出されてくるところでした。どうやら無事だったようです。今回の第一目標はコイツの確保にあったらしいので、とりあえずは作戦成功ですか。よかった、よかった。
さっそく尋問という名の拷問開始です。なんだかわからない所にくくりつけると、 「本隊はどこだ?」 もう、らちがあきません。ま、これは捕虜になった傀儡軍のお決まり行動なので、それはこっちも慣れたもの。そのまま放置と決りました。まだなんか騒いでいましたが、もはや全員アウト・オブ・眼中(爆笑) 「いいかぁ、ヤツラは必ずくるぞ!! 各員、米帝の反撃に備えるように」 最高にカッコいいプロパガンダ状態で、隊長殿が指示を出します。気のせいか、他の者達も影響を受けてしまったようで、一瞬真面目な空気が流れました。が、それを持続できないのが我々です。もうピクニック気分のような賑やかさで、各自が思い思いの場所に布陣したのでした。 布陣完了―― 一瞬の静寂が訪れました。まるで嵐の前の何とかというようなもの――ではありません。むしろ遠足前の興奮した子供といった感じでしょうか。今か今かとワクワクしながら待ち構えていたのです。 そんなときでした。待望の叫び声が上がったのです 「来たぞっ!!」 続く・・・・ |
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